応援したくなる

行政書士 川戸恵子

「はい,以上で完了です。お疲れ様でした!」
という私の声で,会社設立の為の書類への押印を終えられたご依頼者様にようやくほっとした表情が浮かびます。

この,書類への押印は結構大変です。何枚もあるので印鑑に朱肉をつけては押し・つけては押しの繰り返し。しかも失敗がないようにと緊張してつい力が入るからでしょう。全ての書類への押印が済むと,ご依頼者様も,一仕事終えたという気分になって,肩の荷を下ろされたようになります。

一方私も,登記を頼んでいる司法書士に書類を送らねばなりませんから,印鑑漏れがないかどうかを確認して,書類のリストと照らし合わせて,やっと一息つけます。

 

お互い緊張から解き放たれたとき,依頼者様が話好きだと,会社の事業についての話が始まります。

「○○(←事業目的の一つ)のご計画は進んでいますか?」
という私からの質問に,

「今,場所を◆◆にするか◇◇にするか,迷っているところなんですよ。◇◇なら利用者さんが自動車でも電車でも来られて便利そうですけれどね。◆◆のほうが,顧客は多い気がするんですよ。但し,土地が高いんです。それで迷っているんですよね~」

というように,依頼者様の方からどんどんお話ししてくださいます。具体的なことで迷うことはあっても,それすらも楽しくて仕方がないといったご様子です。したいことが定まっているから,あとはどう進んでいくか――なのですね。お顔がまっすぐ前を向き,目が輝いています。

会社を作ろうという方の目的はいろいろですが,世界につながる仕事をしたいという方や,自分のしたいことをしようと決められた方など,ご自分の「夢」を描いてスタートを切られたところです。ご依頼者様のその「夢」が,ほんの少し私の心の中にも入り込んできてくれるようで,心の中に翼が羽ばたいたような,幸せな気分になります。そういう時,会社の発展,そしてその方の夢の実現を心から応援したいと思います。

「何かありましたら,また何なりとお申し付けくださいね」
と申し上げるのも,決して社交辞令ではないのです。